【書評】研究者志望にお勧め: クリック「熱き探究の日々」
- 作者: 中村桂子,フランシス・クリック
- 出版社/メーカー: ティビーエス・ブリタニカ
- 発売日: 1989/07
- メディア: 単行本
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DNA構造の解明で有名な天才的理論家、フランシス・クリックの自伝。分子生物学の創設者の一人。
研究者を目指すならぜひ読んでほしい。自然科学の営みを知りたい人にもお勧めだ。
主な内容は分子生物学が形作られた頃の話。ただしDNA構造の解明の経緯はあまりに知られていて、ほぼ省略されている。
方法駆動ではなくて、新たな視点で次々と面白い考えを編み出していく彼は、ずっと前からの憧れ。この本も読んでみると、期待通り面白いすぎる。
子供のころから知的好奇心が旺盛で、大学院生のころ、テーマをきめる時に、自身の会話の内容を分析し、生命と非生命の謎、脳の謎の2つに絞る。結局、これまで研究してきた物理学が使えそうな前者に取り組み、鮮やかなDNAの解明へ。しかし、この頃から、脳科学に関心があって、後に鮮やかな転身(この本では描かれてないけれど、60歳で)をするだからびっくりです。
生物学と物理学の違いとして、自然淘汰を頻繁にあげ、全てに適用できる普遍法則は無く、進化を考える必要もある(ただ分からないことが多すぎて、当時は研究が難しい)と何度も繰り返し出てくるのは興味深い。
DNA構造の解明後の話も、示唆に富むことが豊富で楽しい。特に間違った考えが、どのように修正され、新しい考えに至ったかについて、天才的理論家ならではの視点で述べられている。例えば、rRNAの存在が認識されておらず、rRNAの実験的証拠がmRNAと解釈され、混乱していた経緯は、非常に示唆に富む。これらの実験的証拠がmRNAではなく、別の物であると解釈して初めて、まったく別の実験へ進むことができた。
また、理論家は、実験屋が検証できる真新しい予測を立てなければならないというのはとても共感。理論だけで閉じている世界は異常だと思うのです。
彼のような一生を知的遊戯に捧げられる真の科学者はもはや伝説級で、現在ではなかなかいない気がしてとても寂しい。
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