ダーウィンの土手

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【研究】盆栽するキンチャクガニ

今週、NHKダーウィンが来た!」にて、キンチャクガニが紹介されるらしい。

第540回「海のチアリーダー! キンチャクガニ」 ─ ダーウィンが来た!生きもの新伝説 NHK

そこでキンチャクガニについて調べてみると、同じ仲間(Lybia)でそれなりに面白い論文(Schnytzer et al 2013)が見つかったので、概略をご紹介。

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キンチャクガニは左右のハサミに小さなイソギンチャクをつけている。カニにとってはイソギンチャクは捕食者を追い払う武器として、 イソギンチャクにとってはカニは食べ残しをもらう相棒といてお互いに利益を得ているらしい。

こういう関係を共生と呼ぶが、では彼らの関係は対等なのだろうか?

カニがイソギンチャクの大きさを操作

研究者らは、カニが与える餌量を制限することで、イソギンチャクを程よいサイズに保つように調整していることを明らかにした。

具体的には、室内の操作実験と観察を行って検証している。

イソギンチャクをつけているカニは、人工的にイソギンチャクを取り除いたカニに比べて、

  • ハサミの位置が真ん中になく、食べ物から離れている。

  • 足の速度を速くする。

そうすることで、過度にイソギンチャクへ餌が渡るのを防いでいるらしい。

また、餌をあげながら成長量を調べてみると、

  • 独立して生きるイソギンチャク:餌をあげるほど大きくなっていく。

  • カニについているイソギンチャク:サイズに変化がなくほぼ一定に固定されている。

このことから、イソギンチャクが食べ残しを勝手に取るというよりも、カニが積極的に管理していることが初めて確認できたとし、著者らは、この関係を”盆栽”共生と呼んでいる。

共生関係はちょっと調べるだけで面白いですね。もっとしっかりと詰めたら興味深い研究テーマになりそう。

引用論文

Schnytzer, Y., Giman, Y., Karplus, I., & Achituv, Y. (2013). Bonsai anemones: Growth suppression of sea anemones by their associated kleptoparasitic boxer crab. Journal of experimental marine biology and ecology, 448, 265-270.
http://www.academia.edu/download/33711293/1-s2.0-S0022098113002827-main.pdf

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